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「不動産売却時における"媒介契約"について」

2014/02/28 カテゴリー: 売買

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 突然ですが博士、持ち家を売却する時に、その不動産が所在する自治体の財政状況で価格が大幅に値下げされることなどはあり得るのでしょうか?
 本日は自治体の財政状況を理由に媒介業者が査定した価格から大幅な値引きを提示されたAさんからの、不動産媒介についてのご相談です。

 

 不動産の価格査定については、宅建業法第34条の2第2項において、業者が媒介契約を締結する際に「媒介価額」について意見を述べるときは、その「根拠」を明らかにする必要があるとされています。そのため、価格査定マニュアル(不動産流通近代化センター策定)などを利用するなど、合理的な説明がつくものであることが重要です。
 Aさんは、売り出しの時にどのような価格査定の説明を受けていたのでしょう?

 

 Aさんは現在東京にお住まいで、お父様から相続された持ち家を売却するため、大手の不動産流通専門業者に依頼され、周辺の相場などの説明を受けて売り出す価格を協議したそうです。
 しかし一向に不動産の売却が進まず3ヶ月ほど経ち、媒介契約の更新をする時期に担当者から、「頑張っているのだけれどAさんの不動産の所在する自治体が赤字なので、価格を下げないと売れない」と、価格見直しの提示がありました。そこで、地元の親戚にそんなに大変な状況か電話をしたところ、親戚が地元の不動産業者を介しこの物件について問い合わせをしたら、「今は商談中」だと返事が来たというのです。
 売主には価格の見直しを持ちかけているのに、一方で「商談中」とはどういうことか、Aさんは不信に陥っています。

 

 なるほど。今までのいきさつを整理すると、これは媒介業者の「偽装商談」による「囲い込み」の可能性がありますね。
 媒介契約制度と指定流通機構について理解するとこのような「囲い込み」などの背景が理解しやすいですので、ここから説明していきましょう。

 

 媒介契約制度は私も知っています。不動産の売買(交換)や賃貸のあっせんなどを依頼する契約で、一般的には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があるのですね。

 

 そうです。昭和55年の宅建業法の改正により「媒介契約の明確化、書面化により、依頼者の保護および不動産流通市場の整備を図ること」を目的として媒介契約制度が整備されましたが、助手くんの知っている3種類は国土交通省が契約を類型化し、標準的な約款を作成したものということになります。

 

一般媒介契約
専任媒介契約
専属専任媒介契約
特徴 複数の業者に重ねて売却の依頼が可能。
売主の自己発見取引(※)可能。
業者1社にしか売却の依頼ができない。
売主の自己発見取引(※)可能。
業者1社にしか売却の依頼ができない。
売主の自己発見取引(※)不可。
契約の相手方の探索方法 レインズへの物件登録は売主の任意。 媒介契約締結後7日以内にレインズへの物件登録が必要。 媒介契約締結後5日以内にレインズへの物件登録が必要。
業務処理状況の報告義務 報告義務無し 2週間に1回以上 1週間に1回以上
有効期間 法律上の規制無し 3ヶ月以内 3ヶ月以内

※自己発見取引=依頼者である売主自身が、自ら発見した相手方と取引をすること。

 

 一般媒介契約は複数の業者に重ねて物件の売却依頼ができ、専任媒介契約は1つの業者にしか依頼できず、専属専任媒介だと依頼者の自己発見取引禁止の特約が付されているということくらいは知っているのですが・・

 

 そもそも媒介契約には、「標準約款に基づくものか否かの表示義務」「価格根拠の明示義務」「契約の有効期間」などの他に「成約に向けての義務」の定めもあります。そしてこの成約義務の中に指定流通機構への物件の登録義務があるのです。(業法第34条の2)

 

 指定流通機構とは、一般にレインズと言われているものですね。

 

 はい。指定流通機構(レインズ)は売却依頼を受けた不動産の情報を登録することで、広く取引の相手方を探すことができるシステムです。
 ところが、この制度が実は「囲い込み」を招くことになってしまっています。これには、業者の仲介手数料に関しての慣行なども影響するので、仲介手数料についても解説しましょう。
 媒介契約により売買等の契約が成立したときは、業者は依頼者に対して「報酬」を請求することができます。仮に1,000万の不動産の売買を例に報酬額を算出すると、不動産の売主から依頼を受ける業者(元付け業者)と、買い手を見つけてきた業者(客付け業者)がある場合、それぞれ元付け業者は売主から、客付け業者は買主から¥360,000-(消費税別)を上限として報酬を受け取ります。

 

【参 考】
売買・交換の仲介における依頼者の一方から受けられる報酬の限度額(消費税別)
物件の売買価額
報酬の限度額
200万円以下の部分 売買価額の5%
200万円を超え400万円以下の部分 売買価額の4%
400万円を超える部分 売買価額の3%

 

 

 では元付け業者が客付けもした場合は、どうなるのですか?

 

 元付け業者は売主・買主から合計¥720,000-(消費税別)を受け取ることになり、これを「両手仲介」と言います。

 

 ということは、業者は「両手仲介」の方が収入は多くなるのですね。

 

 そうです。「囲い込み」とは、レインズを見て業者が問い合わせをしても、元付け業者が「商談中」と偽装し、「両手仲介」をするためにわざと他の業者に物件を紹介しない行為を指します。

 

 でも、媒介契約の期間に買い手が見つからなければ依頼者が困るので、「両手仲介」にこだわるのは、モラルを問われる行為ではないのですか?

 

 その通り、「利益相反」の可能性もある行為ですね。このようなことが発生する原因として、不動産流通業者では1ヶ月当たりの売り上げ手数料の金額ノルマを課せられている営業マンが多いこと、「両手仲介」以外は契約しないよう内々の社内規定を設けている大手流通業者などがいることがあげられます。

 

 媒介契約期間に売れないとどうなるのですか?

 

 大手流通業者はブランド力があり、依頼者もそれに期待しています。ノルマ優先の営業マンの場合、まず「専任媒介契約」を締結するために、査定を少し甘くして最終的にはAさんのケースのように「頑張ってみたけれど、どうしても売れない・・・」という理由で価格を下げて、期間の更新後に再び直接の購入者を探します。

 

 「両手仲介」を諦めることはしないのですか?

 

 ここでも手数料ノルマが影響しています。仮に客付け業者に買い手をつけてもらうと元付け業者の報酬は、¥360,000-(消費税別)でしたね。でも100万値下げを了承してもらい相場よりお得感のある価格になり、「両手仲介」になると、業者の受け取る報酬は¥330,000-(消費税別)×2つまり¥660,000-(消費税別)となり、別の業者が介在するより有利なのです。

 

 依頼者に100万も損をさせてでも、「両手仲介」にこだわる訳ですか!!「商談中」と偽って依頼者に負担を強いるなんて、ブランドを楯に信用を裏切る行為ですね。

 

 昨年、このような実態が新聞紙面にも掲載され、依頼者の不利益の横行を防止するため、「囲い込み」をした業者の利用を停止するなど、指定流通機構の利用規定を改正するというような動きも始まっています。

 

 こんな話を聞いたら、「専任媒介契約」がとても不利に思えてきました。

 

 そうではないですよ。先に話したように、まず価格査定の根拠が明確であることや、数社に査定依頼をして差が大きい場合に納得できる説明があるかは大切な要素です。
 厳しい話をしますが、「ウチは大手で流通網が広い」などの説明で、「少しでも高く売れるかもしれない」と期待する依頼者にもつけ込まれる隙があるのです。
 専任が怖いといって「一般媒介契約」にこだわる依頼者もいますが、かえって販売期間が長くなり価格をだらだらと下げるような結果を招くこともあります。なぜなら、「専任媒介契約」には業務処理状況の報告義務が課せられているため、依頼者も状況が良くわかりますし、業者もいい報告をするために一生懸命動いてくれることにつながるのです。

 

 3種類の媒介契約それぞれのメリット・デメリットやレインズの在り方をよく考え、公正に利用してくれる業者を選び依頼することが大切なのですね。
 実際Aさんは友人に、自分の物件の問い合わせをしてもらったところ、「まだ買い手がいないので、いつでも案内します」と言われたそうです。そこで「偽装商談」を行っている流通業者と媒介契約の更新をせず、親戚を通じ地元の不動産業者に依頼することにしたそうです。

 

 宅建業者は大手でなくとも、所属する団体などで研修会を行うなど研鑽をし、相互の交流もしています。
 媒介契約締結にあたっては、価格根拠の明示、報酬の説明、どんな販売活動をしてくれるか、業務の処理報告はどうかなども確認し、きちんとした対応をしてもらえる業者に依頼するようにしましょう。

 

 

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