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「賃貸借契約における短期解約の違約金について」

2014/01/30 カテゴリー: 賃貸

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 こんにちは、今回はお金が無かったのでゼロゼロ物件だった家賃5万円のワンルームマンションを借りたAさんからの相談です。
 Aさんは入居後しばらくして急に転勤になり、半年後に解約を申し入れました。そうすると、なんと10万円の「短期解約違約金」を支払う様に言われて、家主とトラブルになっているそうです。この「短期解約違約金」とはいったい何なのでしょうか?

 

 ここ5年ほど前から流行ってきた「ゼロゼロ物件」と、この「短期解約違約金」という特約条項は、システム上どうしても切り離せないセットものなのです。
 つまり「ゼロゼロ物件」とは、保証金(敷金)と礼金(敷引)をゼロにして、初期費用を少なくすることで、募集の間口を広げる為に考え出された手法なのですが、この募集形態の欠点を補う為に、「短期解約違約金」特約と、その短期解約違約金の確保を保証する「滞納保証会社の利用」を条件とすることと、「若干の家賃の値上げ」がシステム上セットされているものなのです。

 

 Aさんは貯金があまりなかったのでゼロゼロ物件を選んだのですが、とんだ落とし穴があった訳なのですね!

 

 内容をもう少し詳しく説明しますと、普通は礼金で回収する予定の諸費用(修繕費等:通常損耗料、空室損料、仲介手数料、掃除代等)を契約時にゼロにはしますが、それを「若干の家賃の値上げ」で毎月少しづつ回収するのが、ゼロゼロ物件のシステムなのです。
 よって、賃借人が短期間で解約しますと、この「若干の家賃の値上げ」分で少しずつ回収する予定の礼金等が途中で回収が出来なくなる訳です。ですから、契約から1~2年未満で解約する場合は、家賃の1~2ヶ月分の「短期解約違約金」を支払う特約が予め契約内容にセットされています。
 さらに「保証金もゼロ」ですから、確実に回収するためには「滞納保証会社の利用」が条件になっている訳です。

 

 それにしても半年間で解約するからといって、この「短期解約違約金」が「家賃の2ヶ月分」というのは、余りにも高額ですので、例の消費者契約法で無効ではないのかと疑問に思っているそうですが?

 

 ちょうど、「敷引特約」と「更新料特約」に関する最高裁の判例が平成23年に出ていますので、それを参考にすると良いでしょう。
 「敷引特約」に関する平成23年7月12日に出された最高裁判例の事案の場合は、家賃が17万5,000円、敷金が100万円、敷引が60万円でした。
 「更新料特約」に関する平成23年7月15日に出された最高裁判例の京都の事案の場合は、毎年「更新料」として家賃の2ヶ月分支払うというもの。つまり毎年支払う家賃の合計が14ヶ月分になるというものです。
 これらの事案に対して、最高裁は以下の3つの条件が満たされることで消費者契約法に反しないと判断しました。

 ①「契約書」に消費者の負担額が明確に記載されて合意していること。

 ②その内容が信義則に反して不合理な内容で無いこと。

 ③その金額が不当に高額でないこと。

 

 簡単に言うとどういう判断が下されたのですか?

 

 つまり、敷引の60万円(家賃の3.4倍)と、毎年家賃の2ヶ月分の更新料は、「不当に高額ではない」というのが、最高裁の判断です。
 これには、地方裁判所、高等裁判所で家主側が負けた判例はたくさん出ていましたが、最高裁が決めれば、下級審はすべてそれに従うのが日本の裁判制度です。
 Aさんが交わされた「契約書」には、Aさんが負担すべき「短期解約違約金」の額が明記されていたようですので、どうやらこの最高裁の考え方に沿って考えますと、今回の「短期解約違約金」特約は、これら3つの条件を満たし有効と言えそうです。

 

 そうすると、Aさんは「短期解約違約金」を支払わざるを得ないのでしょうか?

 

 借主は仲介業者の「宅地建物取引主任者」により、契約前に「重要事項説明書」に記載されている物件概要や特約条項を含めた契約条件などの説明を受けます。そして、それらの内容を理解、納得した上で実際に契約するわけですから、「重要事項説明書」・「契約書」にいったん「署名・押印」しますと、たとえ消費者契約法があっても、後から特約条項の無効を訴えるのは大変困難であるということを、この最高裁判例は示しているのです。
 したがって、「重要事項説明書」の説明を受ける際には、わからなければ質問をして、その内容をよく理解し、十分納得してから合意することが肝要です。
 
※なお、借主が「短期解約違約金」の支払いを拒んだ場合には、滞納保証会社はそれを一旦、家主に立替払いしますが、後日賃借人・連帯保証人に対して滞納保証会社が請求してくることになりますので注意が必要です。

 

 それでは、「重要事項説明書」の説明を受ける場合に気をつけなければならない特約条項には、他にどういったものがあるのか、教えていただけますか?

 

 こういった費用発生を伴う特約条項としては、他に「共益費支払い条項」、「通常損耗を消費者に負担させる原状回復条項」、「定額補修分担金特約」、「契約終了時の賃料倍額相当額損害支払特約」、「解約予告3ヶ月前特約」とか、「鍵の交換費用支払い」、「退去時のハウスクリーニング代の支払い」、「借家人賠償責任保険」等があります。
 また管理会社への支払い費用発生分としては、「入居時の抗菌消臭費用」、「入居中の24時間サービス管理費」等があります。

 

 たくさんありますね。どういった点に気をつけて説明を聞けば良いのでしょうか?

 

 一般的には、まずその特約事項の存在理由、支払先はどこか、また支払うタイミング、またそれは必須なのか、選択できるのかなどをよく吟味する必要があります。
 また、こういった特約条項の支払うタイミングが、「契約時のみ」「毎月」、「毎年」、「2年毎」などとまちまちなので、予算とか入居期間などと合わせて、物件を探す前に仲介業者にそういった相談をしたほうが、良いかもしれません。
 また、大阪宅建をはじめ不動産関連団体が窓口となる相談所に契約前の事前相談をすることも一つの方法です。

 

 

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