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「中古物件売却の注意点(瑕疵担保責任)」

2015/12/22 カテゴリー: 売買

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下記記事のPDFファイル
(容量:315KB PDF形式)いったんPCへ保存したのち開いて下さい。

 

 

 こんにちは!今回は中古物件を売却する時にどんなことに注意をすればいいのか、というAさんからの質問だよ。

 

 中古物件の売買については、物件を引渡した数日後に、買主さんから「台所に水漏れがあるので対応して欲しい」と言われ、どうしていいのか分からないと、売主さんから悩みを聞かされたことがあるよ。他にも買主さんからの要求として、雨漏りやシロアリ、給排水の故障やドアの開閉の不具合などが考えられるよね。

 

 売主さんに責任はあるの?

 

 一般的に商品を購入した場合、買った方はその商品にキズなどの欠陥がないことを前提にその代金を支払うよね。でも、故障や不具合があれば商品を交換してもらうか、同じ商品がなければ返金してもらうだろ。

 

 そうだね。

 

 不動産の場合も、欠陥があればその損害について賠償してもらうか、場合によっては、契約を解除したうえで売買代金を返還してもらうんだ。物件を購入するうえで、買主さんの予期しない欠陥は、売買価格の判断材料に含まれていないからなんだ。

 

 なるほど、確かにそうだね。

 

 特に中古物件の場合、買主が物件の価格を判断する際に、中古物件の特徴である経年劣化(時が経つにつれて性能や機能が低下すること)を、どこまで予期しているのか、また欠陥と思われる故障が契約を締結した後に発生した際、売主に責任を問えない場合があることなど、どこまで理解しているのかわからないよね。
 先ほどの水漏れの相談は、「建物本来の欠陥とみなすのか」、「中古物件の経年劣化として建物本来の欠陥とみなさないのか」、それとも「契約後に生じた故障であり、そもそも売主に責任はないのか」、判別するのは難しいよね。

 

 では、トラブルにならないためにはどうしたらいいの?

 

 買主が経年劣化を認識したうえで、売買価格から値引きされていることがわかっていれば、トラブルにならなかっただろうけど、そうでなく、売主が契約時点で水漏れがあったにも関わらず気付かず説明していなければ、欠陥についての責任を問われることになるだろうね。

 

 なるほど、中古物件の場合は新築物件とは違って時間の経過とともに古くなっていくから、なにが本来の欠陥なのか見分けるのが難しそうだね。

 

 その通り。だから、売主は物件の経過年数に関わらず、契約を締結する時までに、物件の状況を客観的に買主に表示する事が大切なんだよ。

 

 じゃあ、売買契約を締結するまでに、売主さんは具体的にどのような事に注意すれば良いの?

 

 例えば、媒介業者に現地案内での物件の内覧を徹底してもらい、引渡し時に再度確認してもらう事や、重要事項説明や物件状況確認書(告知書)などの書類を通して、買主に物件の状況を誤解のないよう正確に伝えてもらう事が大切だよ。

 

 なるほど、買主さんにしっかり確認してもらうことが大事なんだね。

 

 そうなんだ、物件の特徴や欠陥もすべて理解をしてもらったうえで、買主さんに売買価格を判断してもらえれば、少しでもトラブルは防げるんだ。
 その為にも、媒介業者さんと協力して、買主さんへ情報開示をする事が、トラブル防止の第一歩になると思うよ。
 ではもう一歩進んで、この様な情報開示を心がけても防げないトラブルについて考えていきましょう。

 

 防げないトラブルってあるの?

 

 例えば売主がその欠陥に気付かずに契約した場合や、その欠陥を欠陥として認識せずに契約した場合だね。

 

 確かに、いくら気を付けていても気付かない事や、売主さんにとっては欠陥と思っていない事だってありそうだよね。

 

 そうなんだ。そこで、このような見落としがちな欠陥、すなわち法律用語でいう瑕疵(かし)にはどの様なものがあるのかを次に見ていきましょう。

 

※「瑕疵」とは判例では「物が通常有すべき品質・性能を欠くこと」と定義づけられています。

①物理的瑕疵に関わるもの‥‥売主や媒介業者による調査や説明で分かるものもあれば、各専門分野の専門家でないと分からない分野も含まれます。

○土地について‥‥‥軟弱地盤、擁壁の不良、地中埋設物、土壌汚染等、

○建物について‥‥‥雨漏り、水漏れ、シロアリ、建物の不同沈下等

②法律的瑕疵に関わるもの‥‥主に媒介業者が取引の範囲で調査に関連することが多く媒介業者に説明義務(重要事項説明)を課せられています。

○建物を建築するうえでの法規制

○許可や制限の条件(利用用途等)

③心理的瑕疵に関わるもの‥‥最近多く持ち上がる問題です。と言いますのも売主にとっては心理上負担にならない場合でも、買主にとっては負担になるケースもあるため、なるべく買主目線で売主が説明することが望まれます。

○事件、事故、火災、暴力団事務所や嫌悪施設の近隣等

 

 まず瑕疵を原因によって区別すると、上記の3つの種類に分けることができます。特に土地に関しての瑕疵は、引渡した後に大きな支障を生じる場合があり、注意が必要だよ。
 尚、瑕疵でも明らかな瑕疵であれば、すでに売買価格に反映されており、問題とならないけれど、売主も買主も気づかない瑕疵、すなわち「隠れた瑕疵」がトラブルの原因になるんだ。
 売主さんも買主さんも気づかないなんてどうしたらいいの?

 

 いくら売主が注意深く確認し、また媒介業者に詳しく調査を依頼しても、地質や建物の構造などの専門分野までは分からないよね。
 だから、予想される瑕疵については専門家による調査も必要だね。

 

 媒介業者さんはどんなことをする必要があるの?

 

 一般的に、媒介業者には不動産の取引上の調査や重要な事項の説明義務は課せられているけれど、それ以上の専門的な分野までの説明義務はないんだよ。
 もちろん、売買契約の当事者でない為、瑕疵担保責任もないんだ。
 ところが、売主には一般的な説明責任だけでなく、その物件に対する瑕疵についても責任を負わなければならない義務があるんだよ。

 

 なるほど、宅建業者としての調査や重要な事項の説明責任は媒介業者さんにあって、物件に関する説明や瑕疵担保責任は売主さんの責任となるんだね。

 

 そうだよ。そこで媒介業者には、実務上このようなトラブルを防ぐために、物件内容に合わせた瑕疵担保責任の範囲や期間について、売買契約書上で定めてもらうんだ。

 

 どんな内容なの?

 

 瑕疵担保責任について、民法では、買主は隠れた瑕疵を知ったときから1年以内であれば、損害賠償の請求や契約の目的が達成できない場合は契約を解除することができると定められており、これは任意規定(当事者の同意によって決めることができる)なので、瑕疵担保期間の変更や、責任を負わないという特約(特別な約束ごと)もできるんだ。
 例えば、瑕疵担保責任の期間を引渡し後2ヶ月程度に定めることや、買主の了解があれば、瑕疵担保責任を一切負わないという特約も可能なんだ。
 しかし、これは売主が一般消費者の場合に限られるんだ。また、売主が宅建業者の場合は、宅建業法により、瑕疵担保責任の期間を物件の引き渡しから2年以上とする特約以外は、民法の規定よりも不利な特約となり無効となるんだ。

 

 へー!そういう特約があるんだね。それでは、売主さんが一般消費者の場合は「瑕疵担保責任を一切負わない」という特約を契約書に定めてもらえば、売主さんの負担は少なくてすむね。

 

 そうなんだけど、この場合注意しなければならないのは、売主は「隠れた瑕疵」について責任を負わないだけで、気付いていた瑕疵については、当然買主に対して説明責任があり、それを怠ると、契約違反や詐欺にもなりかねないんだ。

 

 なるほど、そこで売主さんが瑕疵に気付かなかったことを後に証明するためにも、専門的な調査が役立つ場合もあるんだね。

 

 そのとおり。だから、「瑕疵担保責任を一切負わない」という文言は、あくまで気付かなかった瑕疵すなわち「隠れた瑕疵」についてのみ通用することを十分理解しておく必要があるね。

 

 はーい!わかりました。

 

 最近、建物におけるインスペクション(建物調査)や地質調査などの第三者機関による物件調査が脚光を浴びています。売主にとっては、売却後のトラブルを防ぐことができるし、診断することで買主に安心感を提供できます。また、買主にとっては購入する住宅の性能や欠陥を事前に確認でき、もし修繕が必要な場合もどのぐらいの費用がかかるのか事前に把握することができます。別途費用も掛かることですので、媒介業者とよく相談の上、取引の安全安心を保つためにも、ご検討されるのも必要かもしれませんね。
 尚、瑕疵担保責任については色々なケースがあるため、分かりにくいことがあれば、契約する前に大阪宅建協会をはじめ不動産関連団体が窓口となる相談所までご相談ください。

 

 そうですよね。もし万一トラブルに巻き込まれ、裁判になれば時間やお金のことですごく負担になりますもんね。博士、本日はありがとうございました。