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「宅建業者が売主の場合の注意点 その2」

2021/07/12 カテゴリー: 売買

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下記記事のPDFファイル
(容量:372KB PDF形式)いったんPCへ保存したのち開いて下さい。

 

 

皆様こんにちは。今回は2021.1.7 UP「宅建業者が売主の場合の注意点 その1」の続編だよ。未完成だけど気に入った建売住宅が見つかったので購入を検討しているAさん。Aさんの話によると、その物件は宅建業者の自社物件で直接契約することになるらしい。媒介とか代理ではないので手数料は不要とのことだけど「売主と直接契約なので少々不安です。何か注意点はないですか?」との相談だったよね。博士、続きをよろしく。

 

前回の「宅建業者が売主の場合の注意点 その1」は

クーリング・オフ

②手付の額・性質の制限

③手付金等の保全措置

④損害賠償額の予定等の制限

⑤自己の所有に属しない物件の契約締結の制限

⑥契約不適合責任(担保責任)についての特約の制限

⑦割賦販売契約の解除等の制限

⑧所有権留保等の禁止

以上のうち④の損害賠償額の予定等の制限までのお話だったね。

たくっち、ちゃんと覚えているかい?もう一度「宅建業者が売主の場合の注意点 その1」を見直してよ。

 

博士わかったよ。ちゃんと復習するよ。ところで今回は⑤自己の所有に属しない物件の契約締結の制限というところからだね。なんか難しそうな表現だな。いったいどういうこと?

 

そうだね。難しい表現だね。民法では他人の物を売る契約は有効なのさ。例えばたくっちが勝手にXさんという人のお家をZさんに売る契約をしてもそれは有効なのさ。但し、あたりまえだけど、たくっちはXさんから家の所有権を取得し、その家を自分のものにしてからZさんに家を引き渡すという義務を負うことになるよ。

 

わぉ!そんなことができるんだ。

しかし、ちょっと待てよ。もし、Xさんが僕に家を売ってくれなかったらどうなるの?僕はZさんとの約束を果たせなくなるよね。

 

大変なことになるね。

債務不履行責任の原則によりZさんから損害賠償を請求されるよ。たくっちは自分で勝手なことをしたんだから自業自得だよ。

 

いくら民法で他人物売買は有効だからと言って先走ったらダメだということだね。

 

そのとおり。

そこで宅建業法では宅建業者が他人物売買の売主となることを禁じているよ。

買主さんに期待を抱かせて「すみません。手に入りませんでした。」なんてことになりかねないからね。これでは買主さんが気の毒だよね。

但し、次の場合例外的に許されているよ。それは宅建業者が現在の所有者と売買契約を締結している場合だよ。これだと宅建業者が物件を取得できるため買主さんに損害を与える危険性が低いからね。

 

なるほど。宅建業者が売主で該当物件の所有名義がその業者ではない場合、所有者との売買契約が締結されているかどうかちゃんと確認することが大事だね。

 

そのとおり。

さすがたくっち!いつもながら理解が早いね。

 

博士、お褒めの言葉ありがとう。

 

あとこれに関連して未完成物件の取引についての制限というものがあるよ。原則として宅建業者は未完成物件を宅建業者でない買主に売ることはできないよ。

 

それじゃあ今回の相談者Aさんは、検討している未完成の建売住宅を購入できないの?

 

但し、宅建業者が手付金等の保全措置を講じている場合、手付金等の額が売買代金の5%以下かつ1000万円以下で手付金等の保全措置が不要の場合は未完成物件を売ってもいいのさ。(詳しくは2021.1.7 UP「宅建業者が売主の場合の注意点 その1「手付金等の保全措置」を参考にしてね)

 

了解。次は⑥契約不適合責任(担保責任)についての特約の制限だね。これもなんか難しそう...。

 

買った家などの目的物の種類又は品質に関する契約内容の不適合がある場合に、売主が負う責任のことだよ。

 

どんな責任を負うの?

 

民法の規定では、例えば買った家にシロアリがいた場合のように、「引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約解除の行使をすることができる。但し、買主はその不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければならない。」と、このような規定になっているのさ。

(契約不適合責任の詳細については今後掲載予定のQ&Aを参考にしてね)

 

ふむふむ。

 

民法上、担保責任については売主免責の特約が認められているが、宅建業者が売主となる場合、民法の担保責任に関する規定より買主に不利な特約は無効なのさ。

例えば「契約不適合責任を一切負わない」とか「不適合を知ってからの通知期間を6ヶ月以内にする」とかこういった特約は無効だよ。

もし、このような特約で契約したら民法の規定に戻ってしまうよ。

 

そうなんだ。

買主さんの不適合を知ってから1年以内というのは、長期間にわたって宅建業者は責任があるということだね。

 

そうなのさ。

しかし、この知ってから1年以内というのは、いつ買主が知るかわからない以上、宅建業者を長期間不安定な立場に立たせてしまうことになる。そこで通知期間を「引渡しの日から2年以内」とする特約は例外的に有効なのさ。

 

よくわかったよ。博士。次は⑦割賦販売契約の解除等の制限だね。

 

これは割賦販売といって代金の支払いを、引き渡し後1年以上の期間に、2回以上に分割して行うことを定めた売買契約のことさ。例えば民法上、買主が2,3日支払いが遅れただけでも相当の期間を定めた催告のうえ契約を解除されてしまう可能性があるのさ。割賦販売の場合、長期間にわたるのが通常だよね。1回遅れただけで簡単に解除されてしまうのは買主に酷だからさ。

 

だよね。

 

そこで、賦払金の支払いが遅れた場合、売主である宅建業者は①30日以上の相当期間を定めて②買主に対して支払いを書面で催告し、この期間内に支払がないときでないと、契約を解除したり、残代金を一括請求することはできないとされているのさ。

 

なるほど。では最後に⑧所有権留保等の禁止についてよろしく。

 

これは⑦に関係していて割賦販売の際、買主が代金を一定の額以上支払うまで所有権をわたさないことを所有権留保というのさ。売主としては代金の回収を確実にするというメリットがあるけれど、買主にとっては登記名義が売主になっているので二重譲渡されてしまう危険もあるし、売主の財産として差し押さえられるということも考えられるよね。

 

ほんとそうだね。なんだかこわいよ。

 

そこで、宅建業者が売主の場合、この所有権留保というのを禁止しているよ。但し、例外があって、それは宅建業者の受け取った額が代金の10分の3以下であるとき。この場合、所有権留保はオッケーだよ。

 

博士いろいろありがとう。Aさん参考になりましたか?宅建業者が売主の場合、一般の消費者同士の契約とはずいぶん異なることがあるよね。大阪宅建協会の会員業者なら懇切丁寧に説明してくれるよ。皆さん、安心して取引してね。

 

 

 

 

 ライター:長村 良二(北摂支部会員)