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民法改正について(その2) 〜迷惑な所有者不明土地建物及び管理不全土地建物を改善するには?〜

2023/12/08 カテゴリー: その他

 

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大変だ!大変だ!!
たくっちどうしたんじゃ?そんなに慌てて!
この間相談した知り合いのAさんだけど、お隣りの家の庭が荒れ放題で大変なんだって!
柿の木の枝が伸びて困ってるって話しじゃったな?
そうそう。柿の木の枝がAさんところに伸びてるだけじゃなく、庭に草木が伸び放題になってるから虫や小動物がいっぱいで…ゴミも捨てられてるみたい。
庭が荒れ放題で、ゴミも不法投棄されとるのか…それは大変じゃな…
こんなときはどうすればいいの?
たしかお隣りは所有者が不明じゃったな…
なら「所有者不明土地・建物管理制度」を利用して「管理人」に庭の手入れをしてもらうようにすればいいんじゃ。
え?なにそれ?
これも2023年4月の民法改正によって新しくできた制度じゃ。
不動産所在地の地方裁判所に利害関係者であるAさんが申立てをすることによって、所有者不明不動産の「管理人」が選任されるんじゃ。
その管理人に庭の手入れをしてもらうことができるんじゃ。
ふーんそうなんだ。
ところで、新しく出来たってことは今まではどうだったの?
そもそも所有者不明の土地建物は登記情報が最新でなく、所有者を探索するのに多大な時間とコストが掛かって、なおかつ所有者にたどり着けないこともあったんじゃ。
所有者がみつからないと、当然に土地建物の管理ができなくて雑草の繁殖やゴミの不法投棄、害虫の発生で周辺地域に悪影響があったり、また土砂の流出や崩壊等で周辺に災害の発生の恐れがあっても簡単に是正措置を取れなかったりして問題になっとったんじゃ。
危険なのにすぐに対策できないのは困るね…
所有者が見つからないと、裁判所に「不在者財産管理人」や「相続財産管理人」を選任してもらうか、物理的請求権(妨害排除等)を行使する必要があったんじゃが、不在者財産管理人や相続財産管理人を選任するには結構な費用がかかり、また物理的請求権に基づく訴訟をする場合も、所有者が不明で庭が荒れ放題でゴミを不法投棄されている状況を立証する必要があったり、さらに是正措置の「強制執行」を確実に行ってもらえるかもわからなかったんじゃ。
えー!いろいろ手間ひまかけてもちゃんとしてくれないかもっていうのは困るね…
そうじゃな。今までは是正までのハードルが高く解決まで時間とコストがかかるのが社会問題になっとったんじゃ。「空き家問題」って聞いたことがあるじゃろ?
しかし、今回の民法改正で時間とコストが軽減されて空き家の発生が抑制されると期待されておるんじゃ。
よくニュースで聞くよね。
ところで、どういうふうにAさんは手続きをすればいいの?
手続きとしては、
1.裁判所にAさんが申立て
2.裁判所による異議届出期間の公告
3.裁判所による管理命令発令・「管理人」の選任
4.管理人による管理
となるんじゃ。
わかった!じゃあAさんに早速伝えに行ってくるよ!
ちょっとまった!まだ伝えてないことがあるぞ。
えー!まだなにかあるの?早く教えて!
裁判所にAさんが申立てを行う際には、庭の手入れやゴミ処分に掛かると思われる費用を予納する必要があるじゃ。
えー!Aさんがお金をだすの!?
そうじゃな。Aさんが立て替えると言ったほうがいいかな。
今回の民法改正では、所有者不明不動産の場合は、管理人が保存・利用・改良行為を行うほか、裁判所の許可を得て対象財産の処分を行うことも可能とされておるんじゃ。
この管理人は、弁護士か司法書士を選任すると考えられておるから、最終的には不動産を売却してAさんに管理費用を返還することになるじゃろうな。
それならAさんも安心だね!
そういえばAさん、家を増築したいって言ってたよ。管理人に相談すればいいんだね。
そうじゃな。選任された管理人と交渉すれば売却してもらえるかもしれんな。
じゃあAさんに伝えにいってくるよ!っていいたいところなんだけど…
なんじゃ?まだ問題があるのか…
Aさん家のお隣りなんだけど…今にも家が崩れそうなんだって!
なんじゃって!?庭の草木が伸び放題で困ってるだけじゃないのかい!?
それは東側のお隣。家が崩れそうなお隣りは西側だって!
なんと…Aさんはとんだ災難じゃな…
で、西側のお隣りは誰も住んでいないのかい?
うん!もうかなり前から空き家みたい。
崩れるくらい放置されてるってことは、誰も管理していないんじゃな…
ところで、所有者は分からないのかな?
Aさんは知ってるみたいで、持主にはなんとかしてってお願いしてるみたいだけど…なにもしてくれないんだって…
そうか…それは困ったもんじゃの…
こんなときはどうすればいいの?
この場合は「管理不全土地・建物管理制度」を利用して「管理人」に建物の手入れをしてもらうようにすればいいんじゃ。
え?なにそれ?さっきのとは違うの?
さっきのは所有者が不明の場合の制度。
今度のは所有者がわかっているけど管理されずに荒廃や老朽化等により危険な状態の場合に利用できる制度じゃ!
内容はほぼ同じじゃが、少し手続きが違うぞ。
え?Aさんはどういう手続きをすればいいの?
手続きとしては、
1.裁判所にAさんが申立て
2.裁判所による所有者の陳述の聴取
3.裁判所による管理命令発令・「管理人」の選任
4.管理人による管理
となるんじゃ。
2.が所有者不明土地建物管理制度と違うところじゃな。
持主から話しを裁判所が聞くんだね。
今回は、所有者が対応しないのが問題なので、まずは所有者の言い分を聞くことが必要じゃな。
それでも対応しない場合に「管理人」を選任して是正するってことじゃ。
こっちも前よりいい制度なんだね?
そうじゃ!訴訟よりも時間もコストも軽減されると期待されておるぞ。
じゃあAさんに早速伝えてくるよ!
ただし、こちらもAさんが是正工事費用の予納が必要じゃ!
さっきと同じだね。わかった!
ただ、この管理不全土地・建物管理制度には、ひとつ注意点があるぞ。
え?なになに?
この制度は区分所有建物、いわゆる分譲マンションには適用できないんじゃ…
え?どうゆうこと??
分譲マンションでは以前と同じように、裁判所に「不在者財産管理人」や「相続財産管理人」を選任してもらうか、物理的請求権(妨害排除等)を行使する必要があるってことじゃ。
分譲マンションでは管理不全で問題になることが少ないと考えられておるんじゃろ…
ふーん、そうなんだ…
事例が少ないからといって、分譲マンションを除外する意味がワシにはわからんのじゃが…
とりあえず今回はAさんには関係ないからヨシ!
まあそうじゃな(笑)
今回も勉強になったよ。博士ありがとう!
今回の民法改正はこれ以外にも多岐にわたるので、わからないことがあったら「不動産無料相談所」に相談するんじゃぞ!

 

 

 ライター:研修インストラクター 植田 亮一(なにわ阪南支部)